猫背と股関節の痛み
猫背と変形性股関節症の関係について
猫背とは、背中が丸くなり、前かがみの姿勢になることを指します。
専門的には、胸椎(背中の骨)の伸展可動域が少なくなっている状態のことです。
近年、この胸椎の伸展可動域が少ないことと、変形性股関節症の痛みとの因果関係に注目が集まるようになってきました。
>>姿勢の悪化と脊柱の柔軟性低下が変形性股関節症の進行に影響
変形性股関節症(OA)は、関節の軟骨が摩耗し、痛みや可動域制限を引き起こす疾患ですが、股関節だけでなく全身のバイオメカニクスにも影響を与える可能性があります。特に、胸椎の伸展可動域(背中を反らせる動き)が股関節の機能にどのように関係しているのかについて説明します。
(バイオメカニクス(生体力学)とは、生物の動きや体の構造を力学的な視点で研究する学問です)
胸椎伸展の制限が股関節の負担を増加
胸椎は、姿勢の維持や全身の動作において重要な役割を果たします。特に、胸椎の伸展が制限されると、以下のような影響が股関節に及びます。
- 骨盤の前傾が制限される
胸椎の伸展が十分でないと、骨盤の前傾が抑制され、股関節の可動域が狭くなる。 - 股関節屈曲時の代償動作が増加
しゃがむ、歩行する際に、股関節の動きだけでなく、腰椎や膝に負担がかかることで、股関節へのストレスが増加。 - 腰椎の過剰伸展(反り腰)を誘発
胸椎の伸展が制限されると、腰椎が過剰に伸展することで、腰部や股関節の筋バランスが崩れやすくなる。
胸椎伸展が股関節の運動連鎖に与える影響
胸椎の可動性は、全身の運動連鎖において重要です。特に股関節の運動と連動するため、胸椎が硬いと股関節の動きが制限されやすくなります。
- 歩行時の股関節の可動性に影響
胸椎の伸展が制限されると、歩行時の骨盤の回旋が抑制され、股関節の伸展動作(蹴り出し)が不十分になる。 - 股関節の内外旋可動域の低下
胸椎が伸展しにくいと、骨盤の回旋運動が制限されることで、股関節の内旋・外旋可動域が減少する。 - 片脚立ち時の安定性が低下
胸椎の伸展が制限されると、姿勢制御が不安定になり、股関節周囲の筋肉に余分な負担がかかる。
変形性股関節症の患者における胸椎伸展の重要性
胸椎伸展と疼痛管理
変形性股関節症の患者では、胸椎の伸展制限があると、腰椎や股関節に過度な負担がかかり、疼痛が増加しやすくなります。
- 腰椎・骨盤の過剰な代償運動 → 股関節への負荷増加
- 歩行時の前傾姿勢の助長 → 股関節前面のストレス増加
- 姿勢の不均衡による筋の過緊張 → 股関節周囲の筋緊張が強まり、痛みが悪化
<まとめ>
胸椎の伸展可動域は、変形性股関節症の症状や股関節への負担に大きく関係しています。胸椎の可動性が低下すると、股関節に代償運動が生じ、痛みや機能低下を引き起こす可能性があります。そのため、胸椎の可動域を改善することは、股関節の健康維持や疼痛管理において重要な役割を果たします。
- 胸椎伸展が制限されると(猫背だと)、股関節への負担が増加
- 胸椎の動きを改善することで、股関節の可動域や痛みの軽減が期待できる
- ストレッチやエクササイズを取り入れて、全身のバランスを整えることが重要
胸椎の可動性を意識した運動療法を取り入れることで、股関節の負担を軽減し、変形性股関節症の進行を防ぐことができる可能性があります。
当院の股関節専門施術や運動療法では、猫背の改善(胸椎の伸展可動域の改善)によって、股関節の負担を軽減することも行っております。