股関節唇損傷
股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)とは、寛骨臼の淵を唇のように覆っている線維軟骨(股関節唇)が損傷(ケガ)を受けている状態のことです。
股関節唇損傷は、股関節の「ぐらつき」をつくり安定性がなくなるので、放っておくと関節軟骨にまで損傷が波及して変形性股関節症へと進展することがあります。
しゃがみ込み姿勢・椅子に座った姿勢・スポーツの中腰の姿勢などで、股関節唇に圧迫刺激が繰り返し加わることにより損傷します。(亀裂がはいる)
40~50歳代に発症しやすく、発症すると突然激しい痛みに襲われます。
炎症が激しい場合は夜間痛がおこりやすく、股関節内(関節包)に水が溜まるとじっとしていても疼くような痛みが起こることがあります。
徐々に発症する場合は、違和感やひっかかり感、ぐらつき、不安定感などが現れることがあります。
「長く椅子に座ると股関節が痛い」「靴下や足の爪切りの時に痛い」など、股関節を屈曲して関節唇に圧力が加わると痛みが出やすいのが特徴です。
痛みの部位をたずねると、「Cサイン」といって、手で「C」の形を作って股関節の横から前を同時に押さえて「ここが痛い」という場合が多い。
股関節唇損傷の概念は、2003年にスイスの研究グループにより提唱されたものです。発表されてから20年程しか経っていないためか、あまり理解されていない医師だと、「レントゲンを撮って異常がないので痛み止めで様子を見ましょう」で終わってしまうことがあります。
股関節唇(軟骨)は、X線(レントゲン)には写らないので、
「レントゲン検査で異常なし だけど股関節が痛い」という原因不明の痛みに悩まされることになります。
進行すると骨化して骨棘となり、股関節唇骨化症として発見されることもあります。
発症しやすい股関節の形状
- 股関節の発育不良 → ① 寛骨臼形成不全により起こる場合。
- 股関節の形態異常 → ② 股関節インピンジメント(FAI)などにより起こる場合。
があります。
① 寛骨臼形成不全
幼少期のころに寛骨臼が十分に発育できなかった場合、寛骨臼形成不全を起こします。
股関節の寛骨臼(屋根の部分)が浅い状態で、骨で大腿骨を十分に支えられないので、股関節唇にかかる負担が増えて股関節唇損傷が起こりやすくなります。
被りが浅いだけでなく、骨頭が前外上方へ亜脱臼していると股関節唇への刺激が大きくなって症状が激しくなる場合があります。
↓
② 股関節インピンジメント(FAI)
股関節(大腿骨頭 と 寛骨臼)の形態異常が原因で、股関節唇を挟みこんでしまい(インピンジメント)、股関節に痛みが起こります。
大腿骨頭が大きい「カム型」と寛骨臼が大きい「ピンサー型」とがあります。
大腿骨頭が大きいタイプ
大腿骨頭が大きく、股関節唇を挟み込むものを「カム型」と言います。
寛骨臼が大きいタイプ
寛骨臼(被り)が大きいものを「ピンサー型」と言います。