腹式呼吸の方法
腹式呼吸の方法には、①歌や発声、②ヨガや瞑想、③健康増進〔リラックス、自律神経安定、体幹トレーニング、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など〕など、その目的によっていくつもの方法があります。
ここで紹介する腹式呼吸は主に、③健康増進 特に、ストレートネック、首の痛み、手のしびれ、胸郭出口症候群、体幹トレーニングに役立つ方法です。
関連 → 腹式呼吸で使う筋肉(インナーユニット)
それでは、個別に解説していきましょう! ↓↓
イスに座った腹式呼吸の手順(やり方)
それではイスを使った腹式呼吸の方法を手順にそってご説明していきます。
息を吐くことから始め、次に吸います。これは、イスに座った状態では、重力が地面方向に働いているのでお腹が膨らみ傾向にあり、お腹に力を入れて凹ます動作がしやすいためです。
この方法は立位(立った状態)で行うこともできます。
①準備
片手を胸にもう一方の手をお腹(おへその辺り)に置きます。胸に置いた手は呼吸の際に胸が動いていない(胸式になっていない)ことを確認するためであり、お腹に置いた手は呼吸の際のお腹の動きを確認するためです。
②息を吐く
胸の方の手が動かないように お腹を凹ましながら口から息を 吐きます。 このとき、口をすぼめて、なるべくゆっくりと吐き (10秒~30秒)口から「フ~」や 「ス~」という風を切る音を立てながら行います。口をすぼめてス~とやることによって、気管支の内圧が上がるので気管支が開き、息を最後まで吐くことができるようになります。(これを「口すぼめ呼吸」といいます)
なるべくすべての空気を吐きだすようにします。そうすることで次の「息を吸う」動作がやりやすくなります。
③息を吸う
息を全部吐ききったら今度は口を閉じて鼻から息を吸います。このとき、決して鼻に力を入れて吸おうとしてはいけません。意識して吸うというよりかは、お腹の力を緩めることによって自然と息がお腹に入るようにします。体感的には「息を吸う」というよりは「息を取り込む」という感覚です。
初めは吐くときにお腹に入れた力を一気に脱力する感じで1秒位で吸います。慣れてきたら3~5秒くらいかけて少しゆっくり吸えるように練習してみましょう。
座位での腹式呼吸 ポイント その1
- まず吐くことから始め、そして吸います。
- イスには浅く座り背筋を伸ばして行います。
- 息を吐くときは、上体が前かがみにならないようにお腹だけが凹むようにします。
- 慣れてきたら、胸の手を外して両手をお腹に添えたり、両手を脇腹や腰に添えて膨らみを感じたり、両手を体からはなして行ったり… といろいろな方法を試してみるのもよいでしょう。
- 通常の腹筋運動では鍛えることができない、コア(インナーユニット or インナーマッスル)と呼ばれる筋肉の一つである「腹横筋」が鍛えられるので、ぽっこりお腹の改善にも役立ちます。
座位での腹式呼吸 ポイント その 2
- 呼吸は自律神経が自然に行ってくれる場合と、意識して行う場合があります。自律神経が優位に働いて呼吸をする場合は、「吸う」ことが優位に働きやすく、意識して呼吸をするときは「吐く」ことを優位にするとやりやすくなります。
- 「息は吸うもの」と考えている方がいますが、意識下では「息は吐くもの」です。息を吸おうとすると上手く吸えないとか、吸おうと思うと体力的に疲れるとか苦しいという場合は十分に息が吐けていないからです。また、息を吐いた後は、息を吸うという意識より「息を取り込んであげる」という意識の方が楽に力まず吸うことができます。
仰向けでの腹式呼吸の手順(やり方)
仰向けで寝た場合の腹式呼吸は手順が少し異なります。
イスの場合は呼気(息を吐く)から始めましたが、仰向けでは吸うことから始めます。これは、仰向けに寝た状態では、重力がお腹から背中方向に働いているのでお腹は凹み傾向にあり、お腹に力を入れて膨らます(吸う)動作がしやすいためです。
①準備
片手を胸にもう一方の手をお腹(おへその辺り)に置きます。胸に置いた手は呼吸の際に胸が動いていない(胸式になっていない)ことを確認するためであり、お腹に置いた手は呼吸の際お腹の動きを確認するためです。
お腹に無理な緊張が入らないようにするため両膝は立てておきますが、その分お腹に力が入り難くなり難易度があがる場合があります。やり難い人は、足を伸ばして行ってもOKです。足を伸ばすことによってお腹に適度な張りが生まれるのでやりやすくなります。
②息を吸う
鼻からゆっくりと5秒くらいかけて息を吸い、お腹を膨らませます。このとき、鼻に力を入れて吸おうとするのではなく、お腹に置いた手を押しあげるように膨らませることによって息を吸います。胸に置いた手は膨らんでいないことを確認してください。
③息を吐く
膨らんだお腹を脱力するようにして口からゆっくりと息を吐きます。吐くときは吸ったときの2~3倍の時間をかけてゆっくりと行います。「フ~」や 「ス~」といった音を立てて行うとやりやすくなります。
仰臥位での腹式呼吸 ポイント その1
- まず吸うことから始め、そして吐きます。
- イスに座った状態と仰向けで寝た状態では呼吸をするタイミング、時間が異なってきますので無理のないように行います。
- 慣れてきたら、胸の手を外して両手をお腹に添えたり、両手を体からはなして行ったり… といろいろな方法を試してみるのもよいでしょう。
- コア(インナーユニット)と呼ばれる筋肉の一つである「横隔膜」が鍛えられます。
仰臥位での腹式呼吸 ポイント その2
- 先ほどイスに座った場合のポイント2では、『意識下では「息は吐くもの」』と書きましたが、仰向けで寝た場合は少し違います。重力がお腹からおヘソへ働くので座ったときよりもお腹がペタンコになっているはずです。つまり、寝ている姿勢自体が自然と息を吐けている状態になります。なので、仰向けの場合は意識下であっても吸うことから始めるとやりやすくなります。この場合、「息を取り込む」という意識は同じですが、より横隔膜の収縮を意識できる利点があります。
腹式呼吸練習時の注意
- 一回の練習は5~10分程度にとどめてください。
- 腹式呼吸時で息を吸ったときは、骨盤底筋群は緩んで下にさがります(関連:インナーユニット)。ですので、失禁のある場合はご注意ください。別に骨盤底筋群の筋力トレーニングが必要になります。
- やりすぎると酸素を取り込みすぎ二酸化炭素を排出しすぎて、血中の二酸化炭素濃度が低下して呼吸性アルカローシス(血液がアルカリ性になる)を起こして手のしびれや手の震え、手足の冷え、めまい、頭痛などの症状が起こることがあります。途中、息苦しくなったりクラクラしたり、気分が悪くなったりしたら無理をせずに必ずしばらく休むようにしてください。
効果 目的
ストレスにさらされることの多い現代人は、とかく胸式呼吸(鎖骨呼吸や肩呼吸)になりがちです。胸式呼吸では、体(特に首肩背中回り)が緊張しやすく、肩こりや首の痛みや、手のしびれ、背中の痛み、猫背などの原因を作ります。また、呼吸がしずらい、息が吸いにくい、過呼吸などを起こすこともあります。
腹式呼吸をそれらの問題解決に役立ち
- リラックス
- ストレス軽減、精神安定
- 免疫力アップ
- 斜角筋、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋の緊張緩和
- 肩こり、首の痛み、手のしびれ、背中の痛みの改善
- 体幹が安定し不良姿勢(猫背、ストレートネック)を改善
- 逆流性食道炎の下部食道括約筋の収縮を補助する
- コア・インナーユニットの筋力トレーニング
- 腹圧を鍛えられるのでぽっこりお腹や胃下垂を改善
- 過呼吸、息苦しいなどの改善
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)のリハビリ
などの効果が期待できます。
なお、歌など発声(ボイストレーニング)で使う腹式呼吸はここで説明した方法よりもっと複雑で別のトレーニングが必要になります。