ブリッジ嚥下訓練による下部食道括約筋の収縮促進

体を動かす筋肉である骨格筋(随意筋)は、自分の意思で動かせる筋肉です。

一方で、胃と食道の境目にある噴門を閉じる筋肉である下部食道括約筋(LES)は、平滑筋に分類され、自律神経の支配を受けて無意識に働きます。そのため、一般的な筋トレでは意識的に鍛えることは難しいとされています。

ところが、この自律神経の働きをうまく活用することで、下部食道括約筋の収縮運動を促し、鍛える方法が報告されています。

このページではそれをご紹介します。

引用元:胃食道逆流症の症状に対するブリッジ嚥下運動

この研究の結論 ↓

ブリッジ姿勢での乾性嚥下の練習は、FSSG スコアと GERD の症状を大幅に改善します。この練習は、有害事象なしで簡単かつ安全に実行できます。このテクニックの有効性を GERD の従来の治療法と比較するために、さらに研究を行う必要があります。

乾性嚥下とは、口の中に食べ物や飲み物などの物質がない状態で唾液や空気を飲み込む行為のことを指します。「空嚥下」とも呼ばれることがあります。

FSSGとは、逆流性食道炎(GERD: Gastroesophageal Reflux Disease)の診断や症状の評価に用いられる問診票のことです。日本で開発されたこのツールは、逆流性食道炎に関連する症状の頻度や重症度を評価し、患者の状態を把握するために広く使用されています。

論文中で実施された方法

ブリッジの姿勢で空嚥下を1日10回行い、各嚥下の間には10秒の間隔を空ける。この訓練は、食後少なくとも4時間経過してから実施されました。 背中の下にクッションを置き、膝を曲げて腰を支える姿勢です。


↑ 1症例(参加者2)の上部消化管内視鏡検査の所見。(引用元より

考察

このブリッジ姿勢(ヒップリフト)は、当院でも逆流性食道炎の下部食道括約筋を鍛える目的で患者さんにおすすめしている体操で、実際にやってみて効果を感じている方が多い方法です。

特に、唾を飲み込むといった空嚥下を行わなくても、反射的に下部食道括約筋の収縮を促す効果が期待できるのではないかと考えています。

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