頭部前方偏位を引き起こす上位交差症候群

スマートフォン使用時の不良姿勢やパソコン作業時の不良姿勢などにより、近年、頭が前に突き出る不良姿勢の人(フォワードヘッドポスチャー)が爆発的に増えてきました。それに伴い、ストレートネックや頭頚部を中心とした体の不調を訴える人も増えてきており、社会問題となっています。

頭部前方偏位(FHP:Forward head posture)

頭部前方偏位とは、頭が正常な位置よりも前に出ている姿勢(頭部前方突出姿勢:FHP:Forward head posture フォワードヘッドポスチャー)のことです。
頭の正常な位置とは、外耳孔(耳の穴)と肩峰を結んだ線が一直線に並んでいる状態とされております。この姿勢は、頭部を支える筋肉がもっともバランスよく保たれている状態です。

頭部前方偏位(フォワードヘッドポスチャー)
  • 正常なアライメント(骨の配列)では、外耳孔(耳の穴)と肩峰が一直線に並んでいます。
  • 頭部前方偏位では、外耳孔が肩峰より前に突出します。

ストレートネックや頚椎症、胸郭出口症候群の患者さんで最も多いのがこの姿勢で、肩こりや頭痛、手のしびれ、鬱などの原因になるとして注目をあびています。

頭が前に出ている姿勢になると頚椎は…

頭部前方偏位の頚椎の動き

後頭骨、上位頚椎(第一頚椎、第二頚椎)は伸展状態(上を向いた状態)となり、中下位頚椎は屈曲状態(下を向いた状態)となります。

上位交差症候群

頭部前方偏位には特徴的な筋肉のグループがあり、緊張しやすい筋群と弱化しやすい筋群を分けた上位交差症候群が有名です。

上位交差症候群とは、チェコのブラディミア・ヤンダ教授(Vladimir Janda 1923-2002)により、緊張して短縮しやすい筋肉グループと、伸ばされて筋力低下しやすい筋肉グループが、X字にクロスした状態で存在し、筋肉バランスの機能障害が起こることを発表したものです。

上位交差症候群 イラスト

緊張して短縮しやすい筋肉群

後頭下筋群(小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)、肩甲挙筋、僧帽筋上部、胸鎖乳突筋、 斜角筋、小胸筋、大胸筋 など

伸ばされて筋力低下しやすい筋肉群

頚部深筋群(頭長筋、頚長筋 など)、僧帽筋下部、前鋸筋 など